東日本大震災は、原子力発電が抱える大きなリスクを露呈させた。代替エネルギーへの方向転換が叫ばれるなか、その候補のひとつである自然エネルギーは、コストの高さが指摘されている。しかし、それは本当なのだろうか。実際に風力発電、太陽光発電、小水力発電、木質バイオマス、低炭素住宅などの自然エネルギーの利用に取り組みつつ健全な財政運営を保っている高知県梼原（ゆすはら）町を取材した。

＜四国カルスト高原という好立地を活かした風力発電＞
　同町で最もコストパフォーマンスが良い自然エネルギーは、標高1,485mという環境に恵まれた四国カルスト高原に２基設置された風車による風力発電である。同風車が2010年3月から11年2月までの１年間に稼動した362日間の総発電量は2,451Mkwhで同風車の最大発電可能量の約24％を発電したという。風車を設置するときにかかる初期投資は約4.45億円を要し、そのうち国からの補助金が約1.84億円で町の持ち出しは2.61億円。四国電力への売電価格は1kwあたり11.5円（税抜き）で同風車が設置された1999年10月から2010年度末までの平均売電量は年間約3,338万円。これから昨年度（10年度）の維持費約750万円を引くと年間の収入は約2,588万円で、毎年この収入を得ると仮定すると町の持ち出し額は約10年後で元をとれる。維持費が多かった04年度の場合だと約15.5年で元をとれる。
　同町は50年までに民間設置も含めて40基を設置する計画。うち同町による設置は４から５基で町全体の消費電力の発電に相当するという。

＜太陽光発電は20軒に１戸以上の高普及率＞
　同町は01年度から太陽光発電の普及にも力を入れている。一般家庭の消費電力を４kwと見積り、同町は１kwの発電能力設備につき20万円、助成上限４kwの設備に対して最高80万円の助成をしている。これに国の助成20万円があり、４kwの設備の設置費用約250万円のうち手出し費用は約150万円となる。この取り組みにより同町の太陽光発電施設の設置率は20軒に１戸を超えている。しかしながら、太陽光発電ですべての家庭の電力をまかなうことはできない。一般家庭の太陽光発電の四国電力への売電額は月に2,000円から8,000円で平均すると年に６万円。手出し費用150万円は25年で元をとることができる計算だ。四国電力への１kwあたりの売電単価が01年で30円台であったのが、11年では42円となっている。また、01年度の４kw発電能力設備の設置費用が約400万円だったのに対し、現在は約250万円と価格が下がってきており、今後、設置数が増えればスケール･メリットで単価が下がるため、より短い年数で手出し費用を回収するようになることが期待できる。

＜四万十川を活用した小水力発電＞
　同町は小水力発電により中学校と町の中心部の街路灯に必要な電力を直接まかなっている。中学校の電力についてみてみると、小水力発電は2010年度は245Mkwh発電し、そのうち13Mkwhを四国電力に売電し、２Mkwhを四国電力から買っている。金額にすると、小水力発電を導入する以前は四国電力に対して年間約170万円支払っていたのが、小水力発電導入後は約120万円支払っている。さらに年間約120万円を四国電力に売電し、あわせて年間約170万円の収入を得ている。しかし、年間の維持費用は約178万円であり８万円のマイナス。また、小水力発電施設の建設費用が２億円で、このうち40％が国からの補助金で60％すなわち1.2億円を町が手出ししていることを考えると、現在のところ小水力発電単体でのコストパフォーマンスは良いとはいえないだろう。しかし、四万十川が維持される限り永続的な運転が可能である。

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